今年、6月7月にコティングリーに関連した書籍が発行されました
「コティングリー妖精事件 イギリス妖精写真」(井村君江/浜野志保著 青弓社)
「妖精が現れる!コティングリー事件から現代の妖精物語へ」(アトリエサード発行)
ロンドンから北へ3時間半ほどの、妖精と深いかかわりがあるというこの村に、私は2018年6月に行きました
この年の3月、「Fiore Spazio 妖精たちの花便り Flower Fairies展」の会期中の最終日に、比較文学者で妖精研究の第一人者である井村君江先生をお迎えし「シシリー・メアリー・バーカーの妖精たち」をご講演いただき、その後ご出席者と先生を囲んでアフタヌーンティを愉しみました (その時の様子はこちら
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そのお迎えに行った車の中で先生が、6月にシシリーの故郷であるクロイドンに行くのよ、とおっしゃったのをきっかけにご一緒させていただけることになりました
その旅行の中の一番の目的地がコティングリー妖精事件で知られるコティングリー村
およそ100年前、この村で2人の少女が撮った妖精の写真がシャーロック・ホームズの作者アーサー・コナン・ドイルの知るところとなり、彼がそれを発表したことから、その後、写真の真偽が事あるごとに論じられてきました

(写真:コティングリー妖精事件/青弓社 より転載)
井村先生は、このことを最初にコナン・ドイルに知らせ、事件の事実を調査したエドワード・L・ガードナーの鞄を所有されていて、チームが作られこの中身が研究され、私たちがコティングリーへ行った前の冬に、恵比寿の東京都写真美術館であったインヴィジブル展でも展示されました

(2018年2月、東京都写真美術館であった「インヴィジブル」展、会期中、今回出版された「コティングリー妖精事件」の執筆者井村君江先生と浜野志保先生がご登壇されたトークイベントにて)
そして、その年の6月にコティングリーへ行き、その翌日は、さらに研究を進めるため、コティングリー関連の資料が収蔵されているリーズ大学の図書館ブラザートンコレクションを予約された井村先生とご一緒させていただく機会に恵まれました
「コティングリー妖精事件 イギリス妖精写真」(井村君江/浜野志保著 青弓社)は、今回のリーズ大学での考察も含め以前より進められたガードナーの鞄の中の資料の詳細な解説に加え、社会的・文化的背景、妖精写真から人々の感性や時代性を浮き彫りにした学術書
妖精が現れる!コティングリー事件から現代の妖精物語へ」(アトリエサード発行)は 新旧のコティングリー事件の研究史を出発点とし広範な問題に対し、幻想文学の立場から向き合う、評論・エッセイ・小説など多数収録されています
今回、「コティングリー妖精事件」には、先生に同行させていただいた時に撮影した現在のコティングリーの写真を
「妖精が現れる!」には、その時の紀行文を掲載していただきました
井村先生が良くこの村を訪れたころは、駅前に妖精の村だとわかるお土産物屋さんなどもあったそうですが今では駅もひっそりとしてここがその村であったことはすっかり忘れられてしまったかのよう

また、私はこの2人の少女を題材にした映画「フェアリーテール」を見て勝手に想像を膨らませていたので、木々の生い茂った緑の木立の中を歩くイメージで到着したところには最初その面影もなく、二人の生きていた時代から100年たっているとはいえ、少しがっかりいたしました
唯一、少女たちが住んでいたライト家に向かう途中、塀に腰かけておしゃべりに興じる2人の少女が、100年前のエルシーとフランシスに重なって見えました

そして、エルシーたちライト家が住んでいた家は当時のまま、残っていて、現在の家主であるご主人にお目にかかり、家のバックヤードからその下に広がる少女たちが妖精の写真を撮り、遊んだと言われるベック(小川)に案内していただきました

なんと、ここは今までの表の通りの光景からは想像もつかない、静けさの中に清涼とした川のせせらぎと木々の合間からこぼれる光、そのうち小鳥がさえずる声も聞こえてきて、妖精がいるにふさわしい土地へとやってきたことを感じさせてくれました


そうして私たちはベックを堪能したのち、また表の通りに出て新興住宅地の中に戻ると、100年前のエルシーとフランシスの時代から一瞬にして現実の世界に戻ってきたかのように感じましたが、通りに、シェイクスピアの「夏の夜の夢」に出てくる妖精たちの名前がついた通りがいくつもあることを知り、今もなお、ここに住む人たちの間にとって妖精たちは身近な存在なのだと気づかせてくれました

折しもこの日は、夏至 midsummer 妖精や植物の力が一年のうちでもっとも強くなるこの日に、井村先生とコティングリーに来ていること自体、思ってもいなかった不思議な出来事
そしてこの後、私たちは不思議な木戸を発見します
いったいこの扉を開けて中に入っていく人はいるのでしょうか?
また、その中には先ほどまでの現実から時も場所もタイムスリップしてしまったかのような空間へと進んで行くことになります
さて、これはいったい何だったのでしょう?
もしよろしければ、続きは今回出版されました「妖精が現れる! コティングリー事件から現代の妖精物語へ」をご覧ください
こちらには井村先生はじめこの旅でご一緒してくださった方々、「コティングリー妖精事件」に関係の深い方々の寄稿のほか、幻想文学の中の妖精として多数小説もおさめられた読み応えのある一冊です
偶然、先生と乗っていた車の中でお話したことから始まったイギリス行き
私はただ、コティングリーに行けることが嬉しくて、こんなに壮大な研究の一日だったということも、写真美術館の展覧会には行っていたもののこれだけ多くの方たちの手により調査されていたことも、今回の書籍で改めて理解いたしました
そんな私が撮った写真が掲載されたり、他の執筆者の中で著しく文才が乏しい私の紀行文を載せていただくなんて夢にも思っていないことがおこりました
コティングリーは行く前からとても楽しみにしていましたが、ただ同行させていただくだけだと思っていたブラザートンコレクションに行って、エルシーとフランシス二人の直筆の絵や写真を撮るために苦労し工夫した様を目の当たりにしたことは、フラワーフェアリーズの写真を撮っている私にとって、言い表せないほどの大きなこととなりました
今回、この旅に同行させてくださり文章など書けないと申し上げた私に何度も書くように励ましてくださった井村先生、この旅をコーディネートし連れて行ってくださった石川さん、ご一緒した川幡さん親子、そしてご丁寧に何度もご連絡くださった青弓社の矢野様、アトリエサード岩田様に感謝申し上げます
井村先生のご著書の中に「人の一生は出会いとふれあいの連続です」という言葉があります
私が出会わせていただいている人やことを想う時、胸がいっぱいになります